第7章:封印の間
2025年・富士山麓 本栖湖——湖底
慎吾は鏡の表面に近づいた。
——目の前にあるのは、巨大な「時の鏡」。
表面は黒く曇り、まるで何かを封じ込めているようだった。
慎吾はごくりと唾を飲み込む。
「……本当に未来が見えるってのか?」
彼はそっと手を伸ばしかけた。
その時——
背後に、かすかな気配が走った。
——スッ……。
慎吾の背筋に冷たい感覚が走る。
(……誰かいる!?)
ゆっくりと振り向くと、そこには影の巫女のリーダーが静かに立っていた。
まるで闇の中から滲み出たように、音もなく現れたその姿に、慎吾は息を呑んだ。
「触れるな。」
影の巫女のリーダーが、低い声で警告する。
慎吾は、思わず一歩後ずさった。
「……いつの間に……!?」
リーダーは慎吾を鋭い目で見据えた。
「鏡の力を制御できなければ、すべてが崩壊する。」
慎吾はごくりと息を呑む。
彼女は、慎吾よりも先に神殿内部へ到達し、静かに見守っていたのだ。
玲奈が慎吾の背後から駆け寄る。
「慎吾! 影の巫女もここに……!?」
影の巫女のリーダーは、玲奈を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「これは、邪馬台国の王だけが扱える“封印”……。」
「卑弥呼が最期に残した“未来を知る禁断の鏡”なのだ。」
慎吾の心臓が跳ね上がる。
(卑弥呼が……未来を知る鏡を封じていた……!?)
本栖湖 湖面——影の巫女 vs. 神無月
「攻撃開始!」
神無月の男たちが一斉に動いた。
湖畔で待機していた影の巫女たちが、剣を抜き、迎え撃つ。
「この地を汚させるわけにはいかない……!!」
玲奈は身を伏せながら、遠くの戦いを見つめた。
(慎吾……大丈夫!?)
すると、無線から慎吾の声が飛び込んできた。
「玲奈!! 扉が開きかけてる……!!」
玲奈は息を呑んだ。「何が見えるの!?」
慎吾が低く息を吐いた。
「中に……何かがある……!」
玲奈の心臓が高鳴った。
(ついに……邪馬台国の秘宝が……!!)
しかし、その瞬間——。
——湖全体が震えた。
玲奈と戦っていた影の巫女、神無月の戦士たちが一斉に動きを止める。
空気が変わった。
——何かが起こる……!!
湖底——封印の間
慎吾は、扉の奥に進んだ。
ライトを掲げると、水中に古代の石造りの空間 が広がっていた。
慎吾は息を呑んだ。(これは……遺跡か!?)
壁には、卑弥呼と思われる女性の像 が刻まれている。
慎吾は慎重に奥へと進んだ。
そして、その中央に——「巨大な鏡」が立っていた。
「玲奈……湖の底に、鏡がある……!!」
無線の向こうで、玲奈が叫ぶ。
「慎吾、絶対に触らないで!! 何か起こるかもしれない!!」
慎吾は、慎重に鏡を観察する。
表面は黒く曇っており、何も映っていない。
しかし——
鏡の中央には、赤い宝石が埋め込まれていた。
(これは……!?)
慎吾が手を伸ばそうとしたその瞬間——
——ドンッ!!
突然、湖底に強烈な衝撃が走った。
慎吾の体が大きく揺れる。
(何だ!?)
鏡の表面がゆっくりと光を帯びていく。
慎吾は息を呑んだ。
「……何かが目覚める!?」
本栖湖 湖面——異変
玲奈は、湖の水面が異様な波紋を描いているのを見た。
「……湖が、光ってる……!?」
影の巫女も、神無月も、全員が戦いをやめ、湖を見つめた。
巫女のリーダーが低く呟く。
「……封印が、解かれる。」
玲奈は竹簡を握りしめた。
「慎吾!! 戻って!! 何が起こるか分からない!!」
無線の向こうで、慎吾の荒い呼吸が聞こえる。
「玲奈……何かが……いる……!!」
「何ですって!?」
その瞬間——。
——湖の水面が割れた。
巨大な水柱が立ち、湖の中央から“何か”が浮かび上がる。
玲奈の目の前に広がったのは、「巨大な石の神殿」 だった。