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第6章:湖底の扉

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2025年・富士山麓 本栖湖

——午前5時、湖畔の森の中。

玲奈と慎吾は、夜通し逃げ回った後、森の中のキャンプエリアでようやく一息ついた。

昨夜、影の巫女と神無月が激突し、その混乱に乗じて二人はどうにか湖から脱出することに成功していた。

慎吾は焚き火の前で膝を抱え、深いため息をついた。

「……クソ、いつまで追われるんだよ。」

玲奈は竹簡を握りしめたまま、小さく頷いた。

「これが、ただの考古学調査じゃないってことね……。」

慎吾は疲れた顔で玲奈を見た。「でもよ、昨日の話……湖の底に何かあるってのは確実だ。」

玲奈は竹簡の文を改めて確認した。

「天が二度裂かれる時、鏡は真実を映し出す。」

慎吾は腕を組んだ。「もし、それが湖の底にあるなら、どうやって確認する?」

玲奈はゆっくりと考え、慎吾に向き直った。

「……ダイビングをするしかないわね。」

慎吾が苦笑する。「おいおい、まさか酸素ボンベがどこにでも転がってるわけじゃないぞ。」

玲奈は微笑んだ。「本栖湖にはダイビングショップがあるのよ。」

慎吾は目を丸くした。「マジか?」

「ええ。本栖湖は透明度が高いから、スキューバダイビングやフリーダイビングのポイントとしても知られてるわ。でも、問題は……」

「俺たち、めちゃくちゃ怪しいってことだな。」慎吾が肩をすくめた。

玲奈は頷いた。「昨夜の騒ぎがどこまで広がってるか分からない。慎重に行動しましょう。」


ダイビングショップ「Blue Depths」

翌朝、玲奈と慎吾は、本栖湖のダイビングショップ 「Blue Depths」 を訪れた。

店内には、ウェットスーツや酸素ボンベ、ダイブコンピューターなどの機材が整然と並んでいた。

カウンターにいたのは、30代半ばの男性インストラクター。

「いらっしゃい、ダイビング体験かい?」

慎吾が自然な笑顔で答える。「ああ、ちょっと湖を探索したくてね。機材をレンタルしたいんだけど。」

インストラクターは慎吾の体格を見て、「経験はある?」と尋ねた。

慎吾は頷く。「ライセンス持ってる。PADIアドバンスド。」

(実際に持っているのか!?)玲奈は驚いたが、慎吾はウィンクしてみせた。

「それなら問題ないね。深く潜る予定か?」

玲奈が割り込んだ。「せいぜい20〜30メートルくらいかしら。」

慎吾はすぐにフォローする。「できれば湖底の岩場を見てみたいんだ。」

インストラクターは少し考えた後、頷いた。

「いいよ。ただし、天気が崩れそうだから気をつけてな。」

慎吾は軽く笑った。「もちろん、ありがとう。」

こうして、二人は正式にダイビング機材をレンタルすることに成功した。


湖へ出発——ダイブ準備

ダイビング機材を積んだ車で湖畔に戻ると、慎吾は手際よく準備を始めた。

「よし、酸素ボンベチェック。残圧OK。」

玲奈もフィンとウェットスーツを確認しながら、少し緊張していた。

慎吾が軽く笑った。「ビビってる?」

玲奈は深呼吸した。「……ちょっとだけ。でも、慎吾がいるから大丈夫。」

慎吾は軽く頷き、レギュレーターを口にくわえた。

「じゃあ、行くぞ。」

二人は湖畔に停めてあった小型のゴムボートに機材を積み込み、慎吾がエンジンを始動させた。

——ブォン……。

モーターの低い唸りが静かな湖畔に響く。

夜明け前の湖は、驚くほど静かだった。

玲奈はボートの縁に座り、湖面をじっと見つめた。

(……ここに、あの“扉”があるのね。)

月明かりが湖面に反射し、銀色の波紋を描いている。

慎吾は慎重にスロットルを押し込み、ボートをゆっくりと湖の中央へ向かわせた。

水面にはほとんど波がなく、まるで鏡の上を滑るような感覚だった。

玲奈が慎吾に問いかける。「……ここまで静かだと、逆に不気味ね。」

慎吾は頷く。「確かに。まるで、何かが待ってるみたいだ。」

玲奈は竹簡を取り出し、手元のライトで文字を確認した。

「天が二度裂かれる時、鏡は真実を映し出す。」

(この湖の底に、何かが眠っている……。)

慎吾がボートのエンジンを止めた。「着いたぞ。」

玲奈は湖面を覗き込んだ。

波一つない湖面の下に、暗闇がぽっかりと口を開けているように見えた。

慎吾はボートの端に腰掛け、フィンを装着する。

「……じゃあ、行くぜ。」

玲奈は慎吾の酸素ボンベを軽く叩いた。「慎吾、気をつけて。」

慎吾は親指を立て、静かに湖へと身を沈めていった。

——ここから、すべての謎が明らかになる。


慎吾、湖底へ潜る

慎吾は、ゆっくりと湖に足を踏み入れた。

湖の水は驚くほど冷たかったが、ウェットスーツがあるおかげで耐えられる。

慎吾はフィンを装着し、酸素ボンベの圧力を最終確認した後、ゆっくりと湖面へ体を沈めていった。

——水中へ。

慎吾は慎重に呼吸を整えながら、ゆっくりと深度を下げる。

——10メートル。

水中ライトを点灯すると、湖の中の景色がぼんやりと浮かび上がった。

(湖底は意外に砂地が多いな……。)

——15メートル。

突然、水流が変わった。慎吾は一瞬、バランスを崩しそうになる。

——20メートル。

慎吾は、水の中に“何か”を見つけた。

(これは……!?)

湖底の砂が、まるで人工的に動かされたように凹んでいる。

慎吾は慎重に近づき、水中ライトを当てた。

——そこには、明らかに「人工的に作られた扉」があった。

慎吾の心臓が跳ね上がる。

(こんなものが……湖の底に……!?)

慎吾は扉の表面を確認した。そこには、竹簡に描かれていた**「鏡の紋様」**が刻まれていた。

その瞬間——

——ゴゴゴゴ……ッ。

扉が、わずかに震えた。

慎吾はすぐに無線を手に取り、玲奈に向けて叫んだ。

「玲奈! 湖の底に……“扉”がある!!!」

玲奈の驚いた声が聞こえた。

「慎吾……何ですって!?」

慎吾は息を呑みながら、慎重に紋様をなぞった。

(この扉の奥に……邪馬台国の秘密が眠っている!?)

しかしその時——。

——湖の上で、影の巫女と神無月が再び激突した。

戦闘が始まった——!

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