エピローグ:新たな兆し
2025年・東京
玲奈は、大学の研究室で静かにコーヒーを飲んでいた。
あの**「水鏡宮」での出来事**が、まるで夢のように感じる。
慎吾は向かいの席に座り、ぼんやりと机を叩いていた。
「……なんか、普通の日常に戻っちまったな。」
玲奈は微笑んだ。「ええ。でも、悪くないわ。」
慎吾は苦笑した。「あんなヤバい体験をした後だと、退屈に思うかと思ったけどな。」
玲奈は竹簡のことを思い出した。
あの時、封印された「時の鏡」。
未来を映し出し、歴史を狂わせるかもしれない秘宝。
それを玲奈は、自ら封印する決断を下した。
(……本当に、あれでよかったのかしら。)
ふと、玲奈のデスクに置かれていた本が、風にめくられる。
——そのページに、ふと目を落とした。
「龍の都、太陽の巫女が守る秘密の門」
玲奈の指が、ページの一文に触れる。
慎吾が気づいた。「おい、どうした?」
玲奈は、小さく呟いた。
「……まだ、終わっていない。」
慎吾が目を細める。「まさか……また何かあるのか?」
玲奈はページを指でなぞりながら、小さく笑った。
「ええ。……次の舞台は、おそらく九州よ。」
慎吾の口元がゆるむ。「いいぜ。今度こそ、普通の考古学調査だといいな。」
玲奈は、静かに微笑んだ。
(……でも、そうなるとは思えないわ。)
2025年・本栖湖
静かな湖面が、朝日を浴びて輝いている。
そこには、影の巫女のリーダーが立っていた。
「……これで、すべて終わった。」
彼女は湖を見つめながら、小さく息をつく。
「時の鏡は封じられた……だが、また別の“門”が開かれようとしている。」
背後から、別の巫女が近づいた。
「何か感じるのですか?」
リーダーは静かに湖面を指さした。
湖に映る富士山の影が、わずかに揺らいでいた。
「時の流れが乱れ始めている……。」
巫女が眉をひそめる。「それは……?」
リーダーは、湖の波紋を見つめながら静かに言った。
「“門”はひとつではない。」
2025年・どこかの地下施設
暗い部屋の奥。
神無月のリーダーが、何かの資料を見つめていた。
「……封印は成功したらしいな。」
別の男が頷く。「ええ。しかし、別の座標が浮かび上がりました。」
男は、古い地図を差し出す。
そこに記されていたのは——
「太陽の巫女」
神無月のリーダーは、静かに微笑んだ。
「邪馬台国の秘密は、まだ終わらない。」
彼は地図の中央を指でなぞった。
「次の鍵は、九州に眠っているようだな。」